秋からは沢木耕太郎全集と卒論用の本ばっか読んでるけど、
時々図書館で適当な本を借りて読むこともある。
これもその一冊。
著者はたしか「マネーロータリング」っていう小説とか、
「幸福の羽の拾い方」っていう本を書いていた人。
息抜き程度にと思って借りた本だけど、
なかなか読み応えのあるものだった。
時折はさまれている写真もいい。
国家にも企業にも依存せずに自分と家族の生活を守ることのできる経済的基盤を
持つことを「経済的独立」という。
著者は国家論や経済論を軽く展開しながら、その大切さを説く。
旧来の価値観が解体し、急速に変わりつつある世の中で、
自分と家族の人生にとって最適なポジションを確保すること。
複数の選択肢から自分の人生を選ぶ自由を手に入れること。
それは人生の経済的な側面に自覚的であれば、不可能ではない、とのこと。
気に入った箇所は、
「大学の図書館で奇怪な哲学用語に満ちた分厚い本を手にしたことがある。
暗号の如きその書物はほとんど理解不能だったが、「人は常に他人の承認を
求めて生きている」と述べたくだりはなぜか記憶に残った。」
「それから十年後、バブルの最盛期に出会った地上げ師は「あんたもダニやウジ以下の
人間になればカネしかないと分かるさ」と言って、夜ごと銀座の高級クラブで花咲じいさん
のように一万円札をばら蒔いていた。
彼は薪の代わりに暖炉をくべるほどの札束を持ち歩いていたが、大して幸福そうには見え
なかった。その時ようやくヘーゲルの言葉が理解できた。彼はカネで買えるすべてのもの
を持っていたが、他者の承認だけは得られなかった。」